犬の糖尿病、腎臓病、クッシング症候群
うちの子、最近よく水を飲むような気がするんだけど・・・
これって普通?病気のサイン?
ジメジメとした天気が続く梅雨も終わりを迎え、だんだんと暑い日が増えてきましたね。
温暖化もあり、毎年どんどん暑くなるように感じてしまいます。
みなさん、熱中症には十分注意して過ごしてくださいね。
さて、わんちゃんにとっても、暑い夏は過ごしづらい季節です。
「うちの子、最近お水をよく飲むのだけれど、まあ、暑いからよね?」
なんて思っている方も、多いのではないでしょうか。
確かに、暑い日に散歩して帰ってくると、水をがぶ飲みする!っていうこと、よくありますよね。
(余談ですが、暑い日には日中の暑い時間帯ではなく、日の出前や日没後の涼しい時間帯に散歩に行くのが鉄則です。
暑い時間に行くと、わんちゃんの肉球が火傷してしまいますので、みなさん気をつけてくださいね。)
でも、本当にそれだけでしょうか?
当然ながら、暑さを感じて、体を冷やすために水を飲むことは、もちろんあります。
しかし、エアコンをつけて涼しい環境にいるのに水を飲む量が多い、以前に比べて水を足してあげることが増えた、気づいたら水皿が空になっている・・・
なんてことがあれば、それはもしかすると、犬の病気のサインかもしれません。
わんちゃんの1日の飲水量は、5kgのわんちゃんでは、約250〜300ml、10kgのわんちゃんでは、約500ml程度が目安となります。
もちろん、活動量に応じて増減するので、たくさんお散歩に行った日や、特に暑い日には、飲水量は増えますし、冬場の寒い時期や、家でのんびりと過ごした時には、飲水量は減りますので、あくまで目安にしてくださいね。
重要なのは、
”ここ半年で、それ以前に比べて、飲水量が極端に増加したかどうか?”
です。
では今回は、以前に比べて水を飲む量が増えた時に考えられる、3つの犬の病気について紹介しますね。
- 糖尿病
- 腎臓病
- クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
@ 糖尿病
「糖尿病って、太っているとなる生活習慣病でしょう?うちの子は健康的な標準体型だから関係ないわ。」
なんて思った方もいらっしゃると思います。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。
そもそも糖尿病とは、血糖値を上手にコントロールすることができなくなり、血糖値が高い状態が続くことで、体のさまざまな部分に不具合がおこってくる病気です。
血糖値をコントロールしているのが、インスリンというホルモンです。
”インスリンが分泌されていない”
ことが原因の糖尿病は、1型糖尿病です。
それに対し、
”インスリンは分泌されているけど、分泌量が足りない、もしくはインスリンがうまく働かない”
ことが原因の糖尿病が、2型糖尿病です。
1型糖尿病は、その人の体質や、インスリンを作っている膵臓の破壊が原因とされているのに対し、2型糖尿病は肥満や遺伝、運動不足などが原因とされています。
人間の糖尿病では、90%が2型糖尿病に該当しますが、わんちゃんの場合には、その多くが、1型糖尿病と言われています。
つまり、わんちゃんの場合には、太っていなくても糖尿病を患っていることが十分にあり得るのです。
人と犬の病気って、似ているようで違う部分もたくさんあるのですね。
では、わんちゃんの糖尿病になると、どのような症状が見られるのでしょうか?
- 多飲多尿(たくさん水を飲み、おしっこの量や回数も増える。場合によっては粗相することも。)
- 食欲増進(歳をとってから急によく食べるようになった、ということも。)
- パンティングの増加(涼しい環境にいて、興奮するような遊びもしていないのに、ハアハアすることが増えた。)
- 皮膚疾患(シャンプーやお薬を使用してもなかなか治らない皮膚病。)
- 削痩(よく食べるのに痩せてきている。)
このような症状がみられる場合には、要注意です。
糖尿病は、いうまでもなく、放置して治る病気ではありません。
そのままにしておくと、最悪のケースも考えられる恐ろしい病気なので、気になる症状があれば、すぐに獣医師に相談してみましょう。
A 腎臓病
腎臓は、治らない臓器・・・
そんなことを聞いたことはありませんか?
そのとおりです。
先ほど糖尿病のところで、人と犬の病気は違うこともある、といいましたが、ダメージを負った腎臓が治らないのは人も犬も同じです。
腎臓病は、急性腎臓病と慢性腎臓病に分けられます。
簡単にいうと、3ヶ月以上、腎臓機能の異常がみられる場合には、慢性腎臓病、と判断されます。
そして、先ほども言ったように、腎臓は回復しない臓器です。
傷ついたものを元に戻すことはできません。
放置すれば、悪くなる一方です。
だからこそ、腎臓にダメージがないかどうか、早めに発見して、治療を開始してあげることで、病気の進行を遅らせることが重要になってくるのです。
では、わんちゃんの腎臓病の症状について、ご紹介します。
- 多飲多尿(たくさん水を飲み、おしっこの量や回数も増える。場合によっては粗相することも。)
- 食欲不振(いつものフードを食べない、好きなものだけを食べる、全体的に食べる量が減ったなど。)
- 嘔吐下痢(消化したフードや黄色い液体、白い泡などを吐く。吐く回数がだんだんと多くなってきている。ここ最近ウンチがゆるい。)
- 元気消失(なんとなく元気がない。年齢を重ねるにつれて、だんだんと元気が無くなってきた。)
- 削痩(痩せてきているのに、ごはんを欲しがらない。)
このような症状がみられた場合には、腎臓病である可能性があります。
特に、この症状がいくつか当てはまる場合には、要注意です。
また、他の疾患でもこのような症状がみられる場合があります。
少しでも気になった方は、動物病院でしっかりと検査を受ける必要があるでしょう。
Bクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
「あ〜クッシング症候群ね!わかるわかる!」
と思う方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。
「クッシング症候群」
という名前さえ聞いたことがない、という方がほとんどだと思います。
しかし、
”犬の病気”
の中では、とてもメジャーな病気です。
まず、クッシング症候群の症状からご紹介しますね。
- ・多飲多尿(たくさん水を飲み、おしっこの量や回数も増える。場合によっては粗相することも。)
- ・脱毛(換毛期じゃないのに毛がよく抜ける。)
- ・呼吸促迫(呼吸が速くなる、呼吸の回数が増える。)
- ・皮膚疾患、色素沈着(治療してもなかなか治らない皮膚病や、皮膚が黒ずんでくる。)
- ・皮膚が薄くなってくる。(お腹などの毛の薄い部分をさわってみて、以前は張りがあった皮膚が、なんとなくしわしわして乾燥しているように感じることがある。)
- ・ヨタヨタと歩く、散歩を嫌うようになる。
- ・お腹が膨らんでくる。
歳をとったせいかしら・・・
そう思うような症状ばかりですね。
歳をとっても、健康であれば元気です。
あれ?と思うことがあれば、すぐに受診することが大事です。
クッシング症候群とは、腎臓の近くにある、副腎という臓器から分泌される、コルチゾルというホルモンが、過剰に分泌されることで引き起こされる症状のことを言います。
コルチゾルは、たんぱく質を分解したり、尿量を増加させたり、血圧を維持したり、インスリンの働きを抑制したりする機能を持つホルモンです。
この働きが過剰になることで、上記のような症状が引き起こされることになります。
また、副腎皮質は脳からの指令を受けて、コルチゾルを分泌しています。
つまり、脳に原因(腫瘍)があるパターンと、副腎そのものに原因(腫瘍)があるパターンがあります。
さらに、クッシング症候群を患っている犬は、他の病気(膀胱炎、皮膚疾患、糖尿病など)を併発していることも多くあるので、この点にも注意が必要です。
いずれにせよ、放置しておいていいものではないので、気になることがある場合には、早め早めの受診としっかりとした検査をおすすめします。
まとめ
以上、
”水をよく飲む”
というのをテーマに、3つの犬の病気を紹介しました。
いずれの病気も、血液検査(外注検査や検査薬を使用しなければならないものもあります。)や超音波検査、レントゲン検査などで、早期発見・治療開始することで、病気の進行を遅らせることができます。
日頃からわんちゃんの様子をよくみてあげて、いつもと違うことがあればすぐに動物病院にかかること、また、少なくとも半年に1回は定期健診を受けることをおすすめします。
また、この3つ以外にも、
”水をよく飲む”
という症状の病気はたくさんありますので、今回ご紹介した病気の症状に当てはまらなくても、
”水をよく飲む”
という症状があるのであれば、一度、獣医師に相談してみるのも良いかもしれませんね。
ご購読ありがとうございました。
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