愛犬の最期を看取れなかった後悔

愛犬との別れ、その8

愛犬の最期を看取れなかった後悔

 

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はじめに

 

人間と犬の生きる時間には大きな差があります。
殆どの場合、人間より犬の方が先に旅立ちます。

 

これはみなさん当たり前にご存じと思いますが、では、犬との別れ方について考えたことはありますか?

 

私はいつも、今家にいる子との別れ方について、絶対に最期はそばにいると決めています。
そう思ったきっかけとなった、愛犬との別れについてお話します。

 

 

愛犬と当時の家族について

 

まずは今回お話しする愛犬について紹介します。
我が家の愛犬はヨーロピアンドーベルマンピンシャーのオス、アルフレッドです。

 

以下では普段通りアルと呼ぶことにします。
完全外飼いで、仔犬の時にブリーダーさんから我が家へ迎えられました。

 

当時は両親と私、そして兄2人という家族構成で、アルが5歳の頃に猫のちゃっぴーを迎えることになりますので、人間5人と犬1匹、猫1匹の大所帯でした。

 

特にアルとちゃっぴーは男同士でいつも仲良くしていたのをよく覚えています。
今回はこんな家族が背負うことになった、大きな後悔について書かせていただきます。

 

寿命と病気

 

ドーベルマンの平均寿命は10歳から13歳と言われていますが、アルは8歳で虹の橋へ行きました。
寿命ではありません。

 

病死と言うわけでもありません。
ではどうしてアルは死んでしまったのか。

 

それについて、今回はすべての愛犬家の方に読んでいただきたい話があります。

 

ドーベルマンに関わる病気としては大型犬特有の病気や、犬のみかかる病気、人獣共通感染症などさまざまありますが、アルは尿路結石を抱えることになってしまいました。

 

とはいえ、簡単な手術で完治できるとのことで、家族みんな、ひとまず安心しました。
手術は全身麻酔のうえで1泊、その後問題なければ翌日には帰宅できるということでした。

 

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手術の日

 

手術の日は普段通りで、私と兄はアルにがんばってねと言って学校へ。
両親がアルを病院に預けてきました。

 

病院までは車で片道30分ほどかかるため、家のことや仕事がある両親はいったん帰宅します。
私は、今日は帰ってもアルがいないのかあと少し寂しく思いながら1日を過ごしました。

 

何日くらいしたらアルと一緒に遊べるかな。
帰ってきたときお芋さんは食べるかな。

 

そんなことを考えながら、帰宅後は誰もいない庭を眺めていました。

 

病院からの電話

 

夕飯を食べていた時です。
家の電話の音が鳴りました。

 

病院からで、母が

 

「あら、手術終わったのかしらね」

 

と笑顔で受話器をとります。
そしてほんの数秒後、電話モードの母の高い声がすっと下がり、口角が下がっていきました。

 

私の席からは電話をしている母の横顔が見えました。
リビングが静かになり、母の震える声だけが聞こえ、私はお箸を置いて兄と目配せをしました。

 

兄の目は今まで見たことがないくらい悲しい色で、私は自分の中でこれは嫌な空気だと、このあと嫌な報せを聞かなければならないのだとわかりました。
電話を終えた母は、本人も受け入れられていないままの様子でひとこと、

 

「アルが死んだって。」

 

と言いました。
母は泣いていました。

 

私も信じられませんでしたし、兄も硬直してしまい、アルと一番の仲良しだった父は震えていました。

 

 

理由

 

私が親から聞いた話では、何かしらのミスがあったということだけでした。詳しくは聞いたのかもしれませんが、今は記憶にありません。
覚えているのは、麻酔の量を間違えただとか、最期は断末魔のような声をあげて、周りを必死に見まわして誰かを探していたということを、医者伝に聞いたことです。

 

簡単な手術だと言ったじゃないか、明日には帰れると言ったじゃないか、また遊べると言ったじゃないか、そんな怒りが幼い私の中でぐるぐると渦巻きました。
死因について、両親にさえ詳しい説明がなかったそうです。

 

もちろん、私たち子どもにはもっとぼかしたことしかわかりません。

 

アル、どうして死んでしまったの?
今でも疑問が残るばかりです。

 

残った体温

 

アルは横たわって動かない状態で、毛布にくるまれて家に帰ってきました。
リビングに横たわるアルは毛布の中で体温が留まっていたためか、触ると温かかったのを覚えています。

 

子ども3人は交代でアルを撫でました。
寝ている時と同じ顔で、まだ少し体温が残っていて、しかしその目は開かないのです。

 

綿を詰められた鼻が苦しそうでした。
とっちゃダメなの?

 

と母に聞きたかったですが、それは鼻から体液が漏れるのを防ぐためだから、取ってはだめよと先に言われてしまいました。
今朝、いつもの顔でこちらを見ていたアルが、どうして、ぴくりとも動かないのか。

 

大きな鼻が詰められているのはどうして。
撫で続けている手に感じる体温がだんだんと冷えていくのはどうして。

 

もう一度とびかかってきてくれないの。
全ての疑問も希望も、死というそれひとつに繋がっていきました。

 

手のひらにあったアルのさいごの体温は消え、私たちは泣くばかりでした。
猫のちゃっぴーはいつもアルのそばにいたのに、その時には少し距離をとって、でもそこから動かず、もう動かないアルを見つめていました。

 

その夜

 

その夜はあわただしく、気温が上がっていく季節だったこともあり、猫とずっと暮らしてきた両親の対応は早かったです。
火葬場への連絡、納骨の手続き、葬儀について、すべて手際よくこなしていたように思います。

 

悲しい、寂しいという気持ちで涙を流し、震えながらも現実について行動できる姿が大人だなと思いました。
アルは明日の朝一番に両親が火葬場に連れて行くと聞いたとき、本当につらかったです。

 

嫌だと思ったし、もう少しこの姿のままでもいいんじゃないかと思っていました。
でも、そう思っても、兄からそれはできないと、仕方ないんだよと聞かされ、納得したふりをしてうなずきました。

 

だって、もっと一緒にいられるはずだったんです。
私たち兄妹は火葬には同行させてもらえませんでした。

 

今にして思えば、暴れてでも行くべきだったのですが、学校に行けというのは親なりのやさしさだったのかもしれません。
いつも通りにして、気を紛らわすべきだと思ってくれたのかもしれませんね。

 

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空っぽの庭

 

学校から帰宅後、シルバーのカプセルを渡されました。
アルのお骨よと母から伝えられ、こんなに小さくなっちゃったんだねとまた涙が溢れました。

 

もうあの大きな体はどこにもない。
もうアルと水遊びや雪遊びもできない。

 

一緒に母の蒸かしたお芋さんも食べられない。
元気になったら……

 

考えていたことすべて、あの夜に奪われてしまった。
空っぽになったアルのための庭は、ちゃっぴーひとりで遊ぶには広すぎたし、私は庭に出るのも嫌でした。

 

そこは、アルと遊ぶ場所だったからです。
子ども3人が入れる犬小屋には、強くアルの匂いが残っていました。

 

銀色の大型犬用の水入れも、ごはんのお皿も、変わらずそこにありました。
ベンチも、犬用ベッドも、芝生も、全部が変わらないのに、アルがもういないのです。

 

犬との別れは私たちにあまりに大きな穴を残しました。

 

残る後悔

 

母が今でもアルの話になると必ず言うことがあります。

 

「アルを預けたときにね、アルが振り返ってじっと見つめてきたのよ。いつもは明日ねって手を振るくらいで出ちゃうんだけど、その時はなんとなく、すみませんいいですかってわざわざ戻ってアルに触ったの。明日の朝一番に迎えに来るからねって言って。それがさいごになるなんて思わなかったのよ。」

 

初めて聞いたとき、アルは家族と離れるだけで本当に寂しかったんだと思い、泣いてしまいました。
母はいつも続けます、あの時そのまま私だけでも残っていればと。

 

最期の苦しいときに、つらいときに、死を悟ったときに、大好きな家族が誰もそばにいない寂しさが、彼にとってどれだけのものだったか考えるだけでも苦しく、悔しいといいます。

 

毎日お散歩をして、遊んで、時々お出かけもして、子供たちと遊んでくれて、優しくて食いしん坊なアル。

 

きっと彼の犬生のほとんどは幸せなものであったと思います。
それでも、私たちは最後の最後に大きな後悔を残しました。

 

彼の人生最後の、最大の苦しみに寄り添えなかったことです。
10年経とうとそれは残り続けています。

 

だからこそと、ちゃっぴーの最期は私のお腹の上で家族に見守られてという、アルにできなかったことをしました。
その判断を得られたのはアルのおかげです。

 

でも、それならばアルのような苦しみや寂しさは他の子にはしてほしくないと思います。

 

今、これを読んでいる方が一緒に暮らしている家族、これから迎える家族の最期を、どうかつらくとも共に過ごすことを選んでほしい。
病院に預けるのならば、どんな簡単な手術であろうと、近くに待機していてほしい。

 

私たちのような後悔をしてほしくないです。
アルのような悲しい最期を過ごす子はいない方がいいんです。

 

寿命でも病気でも、犬との別れ方は、どうかそれぞれの最善になるよう考え、向き合ってください。

 

ここまで読んでくださりありがとうございました。

 

 

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