飼い主がもう帰ってこない?犬の分離不安症の症状とお留守番のしつけ法
<1.愛犬の分離不安>
TVを見ながら抱っこして、同じ布団で寝る。
家の中で歩けばちょこちょこと後ろをついてきて、常に自分の行動を目で追っている愛犬。
こんなにかわいい、愛らしい犬ってほかにいるの?
ってなんとも言えない幸福感に満たされます。
近年、いわゆる共働き世帯は非常に多く、またその陰でステイホーム時間が増えたことによるペットブームも起きています。
在宅勤務も増え、1日中愛犬と過ごしている人も多いでしょう。
新しい生活スタイルの確立により、
「犬の分離不安」
も間違いなく増えています。
今回は犬の分離不安症とはどのような症状で、原因はなんなのか。
解決策はあるのか等、基本のきの部分にスポットライトを当てて考えていきたいと思います。
<2.分離不安の症状>
分離不安症は
「不安障害」
の一つです。
普段は在宅勤務だけど、たまに出社する!
という生活スタイルが定着しつつある世の中で、毎日ずっと一緒に過ごせると思っていた飼い主さんが突然出かけてしまった。
これにより犬は飼い主と離れて過ごす、ということに不安を覚え、ストレスとなり心身に不調をきたしている状態と言えます。
こうしてみると、留守番等の飼い主さんがいないところで症状がでる障害と思うかもしれませんが、飼い主さんが在宅の時にも症状が出ていることがあります。
下記の症状に当てはまった場合、もしかしたら分離不安があるかもしれません。
【お留守番のとき】
- 下痢・嘔吐など胃腸の不調が目立つ。
- 食欲がない。(餌箱の餌が減っていない)
- 部屋が荒れている。物が壊れている。
- トイレ以外の場所に排泄がある。
- 自分の足やしっぽを噛む等の自傷行為が見られる。
- 留守の間吠え続けている。
【飼い主さん在宅時、帰宅時】
- 嬉ションをする(帰宅時等)。
- いつも飼い主さんについて歩いている。(家の中でのこと)
- 飼い主さんの姿が見えなくなるとパニックになることがある。(お風呂やトイレ等)
- 飼い主さんが外出の準備を始めると落ち着かなくなる。
いかがですか?
人にとって仕事をしていると1日なんてあっという間かもしれません。
犬にとって1時間は人でいう4時間くらいに感じているといわれています。
ということは、例えば8時間の労働で、移動を含めて家を10時間留守にした場合、犬は丸1日以上の40時間にも感じているのです。
大好きな大好きな飼い主さんが、丸1日以上帰ってこなかったら。
不安にならないはずがないのです。
<3.分離不安の原因>
前述したように、犬は
「もしかしたらもう帰ってこないのではないか」
という強い不安を抱くことで分離不安になってしまいます。
留守番をする犬すべてが分離不安になるとも限りません。
もしかしたら分離不安になりやすい環境を人間が作ってしまっている可能性もあるということが言えます。
なぜ犬が不安を抱いてしまったのか・・・
以下のようなこと、身に覚えはないでしょうか。
- 保護犬である。
- 子犬の頃に長時間の留守番を経験させたことがある。
- 多頭飼いであったり、常に在宅者のいる家庭で育った。
- 留守番中に雷や地震など、恐怖体験をしたことがある。
- 飼い主が数日帰らず、ずっと一匹で過ごした経験がある。
- 引っ越しをし、生活環境が大きく変化した。
- 飼い主家族の生活スタイルの変化(就職・進学等で在宅時間に変化があった。)
- ペットホテルに預けたことがある。
- 飼い主の家族構成が変わった。(結婚や出産等)
- 加齢、病気がある。
現実的でない例もありますが、少なからず1、2個は思い当たるものがあるのではないでしょうか。
これを経験しても分離不安にならないワンちゃんもいますので、経験したから必ず分離不安というわけではありません。
また、上記以外にも原因がある場合があります。
<4.分離不安を改善する>
分離不安を改善するには、獣医さんへの相談が不可欠となります。
ペットカメラ等を使用し、留守番中の犬の様子を確認することは状態を説明するためにもかなりおすすめできます。
相談してまず提案されるのは、
「行動療法」
と呼ばれる投薬を行わない治療法だと思います。
症状にもよるので、これがすべてではありません。
犬は人間ととても近い距離で生活しているため、飼い主がどうしたらお留守番になるか、などを見て覚えています。
人間も出かける前のルーティーンて、ありますよね。
寒い日はコートを着て、鍵を持ち、携帯をもって玄関に行って靴を履く。
これだけでも立派なルーティーンなんです。
「コートを着たってことはまさか出かける?!」
って犬はちゃんと見て覚えています。
このルーティーンを崩すことが治療のひとつになるのです。
コートを着ても、出かけない時もある。
ということを覚えてもらいます。
また、靴を履いて出かけたけど1分で戻ってきた=出かけてもずっと留守番とは限らない、ということです。
我が家の愛犬も引っ越しをきっかけに分離不安の症状が見られ、獣医さんに相談し、この方法で行動療法を行いました。
そして留守番中の環境の改善もとても大切です。
飼い主が出かけたとたん、家の中は暗くなりシンと静まり返ったら。
人間でも寂しさを感じますよね。
このような気持ちにさせないように、小さな電気をつけて出かけたり、犬がリラックスして過ごすことのできる音楽をかけたり。
無音の状態にしないことも効果的です。
Youtubeにも犬の分離不安を和らげる、犬のための音楽チャンネルがあったりします。
飼い主の在宅時にあんまりベタベタとした関係にしすぎないことも治療のひとつです。
構ってほしいと犬の方から近寄ってきたとき、心を鬼にしてあえて無視をする。
愛犬が落ち着いて自分の場所に戻っていったらかまってあげる。
いいこにしていれば構ってくれると思わせてください。
さらに、出かけるときの挨拶もやめましょう。
「〇〇ちゃん、行ってきます、いい子に待っててね。」
この一言で、愛犬の寂しさスイッチは一気にON!
出かけるときはそーっと、いつの間にか出かけてください。
行動療法を始めたからといって、急激な改善はあり得ません。
分離不安の改善は根気強く、時間をかけて行う必要があります。
行動療法で改善がみられなければ、いよいよ投薬療法を試すことになります。
これはいたってシンプルで、精神安定剤を使用することになります。
雷がどうしても苦手だったり、花火の音でパニックになり、体をブルブルと振るわせてよだれをたらしたりパンティングをしたりするワンちゃんにも使用されることがあります。
薬で精神を落ち着かせ、眠らせてしまうのが薬物療法です。
なんとなく、愛犬に安定剤を使用するのは抵抗を感じる飼い主さんも多いでしょう。
そんな方は犬用のサプリメントを試すことも良いのではないでしょうか。
国内の有名化粧品・サプリメントを販売しているメーカーのものや海外のものまで。
数多くの商品がネットで簡単に、そしてなかなか安価に手に入れることが可能です。
<5.分離不安に完治はない>
人間の精神障害が治りにくいのと同様、犬の分離不安も完治することはなかなかありません。
様々な方法で改善が見られたとしても、また何かきっかけがあれば長い治療は水の泡となり、一気にスタート地点に戻されることもよくある話です。
かわいい愛犬をわが子のように愛でる気持ちは痛いほどにわかりますが、その結果、愛犬が苦しい思いをする可能性もあるということを忘れてはなりません。
重ね重ねになりますが、分離不安の治療は簡単ではありません。
長い長いトンネルの中をさまようかのように、3歩進んで2歩下がるの繰り返しになります。
つらいのは人間だけではなく、最も頑張らなければならないのは愛犬だということ。
そんなことにならないためにも、ここはグッとこらえて愛犬との距離感を見直すことが必要かもしれません。
ご購読ありがとうございました。
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