愛犬による家族のランク付け
犬は祖先であるオオカミの時代、群れで生活をしており、その中でリーダーを作り集団生活をしていました。
そして現代の犬にもその性質が残っており、オオカミの群れから、飼い主の家族へとその対象が変わっている、と言われているのはご存じでしょうか。
今回は、愛犬による家族のランク付けについてお話致します。
【1.上下関係の優劣】
愛犬が家族を順位付けしている、と思われる例が
- 『お父さんの言う事しか聞かない』
- 『お母さんが呼ぶと来るのに、自分が呼ぶと無視する』
- 『帰ってきた時の喜び方が違う』
等です。
犬同士での上下関係の優劣は力関係にあるとされています。
その為、厳しいお父さんが群れのリーダー、体が小さく自分よりも力の劣る子供は自分よりも下、といったように順位を付けると言われています。
犬の方が優位に立つ事で一番困る事は、言う事を聞かない事です。
吠える、噛みつく、突然走り出すといった時に、飼い主の制止の命令を聞かなくなります。
そうすると、飼い主にとっても犬にとってもストレスの原因になりますよね。
特に大型犬になると、飼い主より体も大きく体重も重いので、言う事を聞かなくなると力尽くでも止められなくなる為、しっかりと言う事を聞かせるように躾なければなりません。
【2.犬の順位付け行動】
犬にはいくかの順位付けをしている、と思われる行動があります。
その中でもわかりやすいものが
『マウンティング』
と呼ばれる行動です。
マウンティングとは犬が発情期に見せる行動と思われがちですが、自分の力を誇示する際にも行います。
自分のお気に入りの玩具や寝具等にマウントをしている姿を見る事がありますが、
「これは自分の物」
と主張しているのです。
しかし、嬉しさのあまり興奮してマウント行動をしてしまう犬もいるので、一概にもマウンティングが優劣による物という訳でもありません。
その他にも飼い主に対して噛みつく、威嚇するなど攻撃的な行動をする場合は、飼い主を自分よりも下に見ている可能性があると言われています。
【3.飼い主が下に見られる原因】
愛犬が関係性を勘違いしてしまう原因をいくつか紹介致します。
まず一番の要因になるのは、飼い主の叱り方です。
愛犬を溺愛してしまうあまり、??るべき所で叱れない、叱る事が可哀想でつい許してしまう等を繰り返していると、飼い主にリーダーシップを感じられなくなり、愛犬の立場の方が優位になってしまいます。
自分よりも愛犬を毎回優先してしまう、欲しがる物を毎回与えてしまう、それは愛犬を愛する事とは別に甘やかせすぎることになり、愛犬との正しい関係性が築けなくなってしまいます。
【4.愛犬は家族を順位付けしない?】
さて、今まで愛犬が家族を順位付けする話を致しましたが、近年の研究の結果では
「犬は家族を順位付けしない」
という見解も出されています。
犬は家族に上下関係のランク付けをするのではなく、個々に適した人物を見極めていると言われています。
- 「お父さんは頼りになる人」
- 「お母さんは安心する人」
- 「お姉さんは一緒に遊ぶ人」
と言ったように、個人に役割を求め、接し方を見極めているのです。
例えば、私が以前飼っていた愛犬は散歩をする時、家族一人一人と散歩の仕方が異なっていました。
躾をしっかりしていた父と歩くときは必ず父よりも前に出ず、寄り添った形で歩き、走り出したりもしませんでした。
あまり運動の得意でない母は歩くのが遅かった為か、愛犬は母と歩くスピードを合わせ、終始母の顔色を窺って歩いていました。
当時高校生だった私と歩くときは、よく一緒に走っていたので、誰よりもはしゃいで散歩をしていました。
そして、一緒に歩いた事のない兄と散歩に出掛けた際に愛犬が取った行動に当時の私は驚きました。
先程の上下関係の例ならば、自分に強い態度を取った事のない人物に対しては好き勝手に振舞う、という話だったのですが、私の飼っていた愛犬は、一度も歩いた事のない兄との散歩の
『正解』
がわからず、立ち尽くしてしまったのです。
兄も
「自分以外の家族の散歩と同じように、もしくは犬が行きたい道を好きに歩いてくれる」
と思って愛犬に散歩を任せていたのですが、庭から一歩も動かず途方に暮れた愛犬を見て驚いたそうです。
結果30分程庭の周りをうろうろしていました。
このように、犬は個別の人物によって接し方を変えており、個人に役割を求めていると言われています。
【5.オオカミと犬の違い】
集団生活においてのオオカミと犬の違いが、オオカミは群れでリーダーを作り、自分たちで餌を取り縄張りを守る、と言った独自の自己判断で動いていました。
しかし犬は、近年人に飼われ過ごすうちに、人間に頼らなければ生きていけないようになりました。
一つの研究として、オオカミと犬にそれぞれ餌の入ったビンを与えました。
そのビンに入った餌をどのようにして取るか、という検証です。
オオカミは一目散にビンに向かい、自分の力でどうにかビンの中の餌を取ろうとしました。
結果としてビンの中の餌が取れなくても、人に頼ることは勿論ありませんでした。
しかし、犬の場合は、オオカミと同じようにビンに向かい、中に入った餌を取ろうとしますが、いくらか自分で試して餌が取れないと判断した瞬間、傍にいた人に近寄って行ったり、顔を見つめたりと、最終的には人間に餌を取るように頼って来たのです。
このように、オオカミの時代の時と現代の犬の習性や価値観が変わってきている為、集団生活での上下関係も変わっているのではないか、と言われています。
また、オオカミは集団生活でリーダーを決めて行動する、とありましたが、他人同士のオオカミ達との集団生活とは別で、子供を持つオオカミの場合は、子供のオオカミに親のオオカミは餌を与え、家族間では支え合って生きていました。
現代の犬と飼い主の関係性は、オオカミにとっての集団生活とは別で、オオカミ達の家族同士の関わり合いと同じなのではないかと言われています。
【6.犬にとって大切なのは上下関係ではない】
結論として、犬にとって最も大切なのは上下関係のランク付けではなく、信頼関係や安心感を与えてくれる事です。
適度な躾や決まり事等を行うのは犬を飼う上で勿論必要な事です。
「愛犬が父の言う事を聞くのに自分の言う事を聞いてくれない」
というのは一概に、言う事を聞かない人を下に見ているわけではないかもしれません。
犬は損得を考える生き物です。
「この人の言う事を聞けばおやつが貰える」
と思えば、賢く振舞い
「この人は言う事を聞いても何もくれない」
と思えば、お手もおすわりもしてくれない場合があります。
愛犬が自分を低く見ている、と誤解する事があっても、それは愛犬にとってはそんなつもりではない事も多々あります。
例えば、散歩の際リードを引っ張って自分よりも先に行く事。
これはただ楽しくて興奮して
「早く行こうよ!」
と散歩に誘っているだけの場合があります。
そして、頼りになる人やそうじゃない人の見極めもしており、その為言う事を聞かない事に繋がるのかもしれません。
飼い主の接し方や考えが犬の行動、性格に影響を与えています。
愛犬の行いに
「自分を下に見ている!」
と感じるのではなく、
「愛犬がなぜそのような行動をしたのか」
「自分が何か影響を与えるような行動をしてしまったのではないか」
と、自分の行いを振り返ってみることも今後愛犬と接していく上で大切な事です。
しかし、言う事を聞かない事は下に見られている訳ではないにしろ、制止や命令を聞かない事は事故や怪我のトラブルに繋がります。
ダメな事はダメだとしっかりコミュニケーションを取ることが現代の犬と人間の正しい関係性なのではないでしょうか。
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