辛い闘病生活で、愛犬が私にくれた物
2年間の闘病生活
我が家の愛犬りおんは、12歳の時から様々な病気に冒され、2年間の闘病生活を過ごしました。
最初に心臓病が発覚し、半年に1度検診を受ける予定が、発覚から3ヶ月で肺に水が溜まる命の危機的状況になり、その1年後には慢性気管支炎で咳が止まらない状況になりました。
闘病生活は、当然りおんにとって辛いものでしたし、私たち家族にとっても肉体的にも精神的にも辛いものでした。
しかし、この闘病生活があったからこそ気付いたこと、また得たことも沢山ありました。
今回はそのことについてお話していこうと思います。
心臓病と投薬
前章に書いた通り、りおんは心臓病発覚と共に命の危機的状況に陥りました。
通常であれば、急に悪化するということは多くなく、定期的な検査で悪化していないかの確認をし、心臓病の進行が見られると徐々に投薬を開始していくのが一般的です。
しかし、我が家の愛犬は要観察段階から突然危機的状況に陥ってしまったので、愛犬の身に何が起きているのか、十分理解できないうちに投薬が開始されました。
薬を飲ませ忘れると命にかかわるため、飲み始めたら一生飲み続けなければいけません。
りおんは今まで大きな病気をしたことがないため、薬を飲ませるのは初めての経験でした。
人間であれば、理由を説明して飲んでもらえばいいですが、犬はそうはいきません。
嫌なことはしないし、食べたくないものは食べません。
いかに薬とばれずに飲ませられるのかが重要になります。
最初は愛犬も薬を飲んだことがないため、おやつに薬を埋め込んで食べさせても、何も抵抗なく食べてくれていました。
しかし毎日食べていると、ふと様子がおかしいことに気付くのです。
たとえば、たまたま噛んだところに薬が顔を出していたり、偶然薬だけ最後に残ってしまったり。
このようなことが続くと、徐々に食べ物に対して疑いが生まれてきます。
次第に、食べ物を全て分解して中身を確認してから食べるようになったり、もはや薬が入っていなくても食べ物を受け付けなくなってしまいました。
薬を飲ませなければ、と私もプレッシャーでイライラしてしまい、毎日薬の追いかけっこで愛犬も私も疲労困憊でした。
どうしたら気持ちよく薬を飲んでくれるのかぼんやり考えながらペットショップを歩いていたところ、私たちの悩みを解消する、ある物に出会いました。
それは、投薬用シリンジです。
薬を潰して、水とガムシロを混ぜたものをシリンジで直接口に飲ませる方法です。
シリンジで薬をあげたことがなかったので、押すスピードやシリンジを口のどの部分に入れればいいのか戸惑いましたが、慣れると簡単に飲ませることが出来ました。
また、薬はガムシロで甘くなっているため、りおんも嫌がりません。
むしろ、喜んで飲んでくれるようになりました。
この方法は大成功で、闘病生活が終わる日まで嫌がることなく飲み続けてくれました。
愛犬2人と苦難を乗り越え、今まで以上に固い絆で結ばれたように思います。
ネブライザー作戦
りおんは、心臓病以外にも慢性気管支炎の疾患があったため、その治療としてネブライザーも行っていました。
ネブライザーとは、人間が耳鼻科で鼻や口に直接霧状の薬剤を入れる医療器具です。
犬にもあることに驚きましたが、呼吸器系の疾患の場合は、ネブライザーが登場する機会がよくあるようです。
ネブライザーを犬にするためには色々やり方があるようで、我が家では最初シリコンで出来たマスクを口の前に当てるやり方で行っていました。
しかしこれだと、霧状の薬剤を嫌がって暴れてしまうため、なかなか吸ってくれませんでした。
そこで病院から教わったのが、小さなケースに犬を入れて、空気中に充満する薬剤を吸ってもらうという方法でした。
これなら動いたとしても、確実に薬剤を吸ってくれます。
ケースに入れてネブライザーを始めた時は、狭いところに入れられることを嫌がり暴れることもありましたが、毎回やっているうちに、15分経てば出してもらえることがわかり、ケースの中でくつろぐようになってくれました。
さらに、りおんがもっと寛げるようにケースの上から布をかけて暗くしたり、テレビの音を消して静かにするようにしたり、より寛げる環境を整えるようにし、その甲斐あってネブライザーの時は自らケースの中に入ってくれるようになりました。
りおんが気持ちよくネブライザーをしてくれるまで悪戦苦闘の毎日でしたが、気持ちよさそうにケースの中で寛いでいるりおんの顔を見ると、喜びもひとしおです。
通院に次ぐ通院
残念なことに、投薬とネブライザーを毎日していても、進行していく病気のため、病院に行く回数は徐々に増えていきました。
最初は3ヶ月に1回でしたが、慢性気管支炎を発症してからは週に1度、肺に白い影が見え始めてからは週に2度、肺炎を起こしてからは1日2回の通院になりました。
雨の日も風の日も台風の日も通わなければならないので、家から徒歩10分の距離ではありましたが、大変なことも多くありました。
いつもバギーにりおんを乗せて病院まで連れて行き、雨の日はバギーにポンチョを着せ、自分は傘をさして向かいました。
嵐の日は風でポンチョが飛ばされそうになるのを手で押えながら小走りで病院まで向かいます。
もちろん、その時は傘をさす余裕はないので自分はずぶ濡れです。
それでも、病院に着いてバギーの中のりおんが少しも濡れずにのんびり座っているところを見ると、微笑ましく、達成感でいっぱいになりました。
さらに、病院のスタッフの方も最初は事務的な話しかしていなかったのが、毎日顔を合わせるようになるにつれて、
「今日は良い天気ですね」
「りおんちゃん、今日は体調が良さそうですね」
と、会話が増えるようになりました。
その他にもりおんが入院した時には、休み時間にりおんの様子を動画で撮って、迎えに行った時に見せてくれたりもしました。
話すようになったのは、病院の方たちだけではありません。
我が家と同じように毎日病院に通う方と顔見知りになり、よく話すようになりました。
病院で見かければ、お互いの犬の調子はどうかと話したり、近所のレストランの話をしたり。
今まで愛犬と2人で病気と闘ってきて、孤独と不安で押し潰されそうな時もありましたが、同じように闘っている仲間や、頼れる病院のスタッフの方々に出会えてとても心強く、自信も持てるようになりました。
愛犬が私にくれた物
りおんにとって、辛く長い闘病生活もついに終わりを迎えました。
りおんが虹の橋を渡った日、すでに呼吸もうまく出来ない状態になっていたため、病院に朝連れて行き、そのまま日中入院をしていました。
そして夕方に差し掛かった頃、りおんの容態が急変したとの知らせを病院から受け、私は大急ぎで病院へ向かいました。
到着すると、すでにりおんは心臓マッサージをされており、意識はなく、そのまま私の傍から旅立っていきました。
いつかこの日が来るとずっと覚悟をしてはいましたが、実際に来ると、とてつもない喪失感と寂しさでこれから先、どうしていけばいいのか分からなくなりました。
病院の椅子でボーッとしていると、先生が声を掛けてくれました。
今までたくさんの子を診てきたけど、その中でもたくさんの治療を頑張ってきたりおんはいつまでも心に残る子です、と言ってくれました。
また別の先生は、検査が嫌で怒ることもよくあり、普通そういう子は先生や看護師に嫌われるものだけれど、りおんはそんな事はなく、皆から愛される子でした、という言葉をくれました。
一緒に病気と闘ってきた犬友さんからも素敵なお花をいただき、りおんとの思い出を語りました。
今でも病院の前を通ればスタッフの皆さんが手を振ってくれますし、犬友さんとも定期的に会っています。
りおんはいなくなってしまいましたが、私に沢山のものを遺してくれました。
どれもりおんが繋いでくれた、素敵な縁です。
りおんが病気になる前は、仕事や遊びなど自分のことを優先することも多くありましたが、病気になってからは、ほとんどりおんに付きっきりの毎日でした。
そのおかげで、今まで気付かなかったりおんの怒った顔、不満な顔、疑いの顔、満足そうな顔、嬉しそうな顔、たくさんの顔にも出会えました。
りおんのために投薬やネブライザー、通院とたくさんのことをしてきたと思っていましたが、それ以上にりおんは私に沢山のかけがえのないものをくれました。
りおんには感謝の気持ちでいっぱいです。
寂しい気持ちはまだまだ消えそうにありませんが、これからも心の中でりおんは生き続けてくれると思います。
ご購読ありがとうございました。
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